Trident Equine Dentistry Schoolに参加しました

Trident Equine Dentistry Schoolに参加してきました。

これはイギリスのレットフォードにて、2025年10月11日から19日までの9日間にわたり行われました。

Equine Dental Technician(EDT)という馬の歯を削る職人の養成を目的にしているコースです。

一般の人でも参加可能です。ただ、イギリスでは馬を飼うことは珍しくないため、

自宅で馬を飼養していたり生家が牧場であったりと、馬に慣れ親しんでいる人が参加している印象を受けました。

 

ところで、馬の歯を削る道具をご存じでしょうか?

道具は手動か電動かによって異なります。

Hand Floatと呼ばれる先端にヤスリのついた専用の道具を歯に当てて削っていくものと

Power toolと呼ばれる電動で削るものの2つに分けられます。

Hand Floatの方は道具を握ってゴリゴリと自分の力で削る必要があるため体力的に結構しんどいです。

一方で電動の方は自動でヤスリ部分が振動し、それを歯に当てるだけで削ることができます。

 

日本では、獣医師のみに馬の歯を削ったり抜歯をしたりなどの行為が許可されていますが

海外では獣医師でなくても馬の歯を削ることができます。

しかし、イギリスにおいてはそのEDTにも規制があります。

行ってもよい処置が具体的に決まっており、難易度別にカテゴリー1または2に分類されます。

2つある団体のいずれかに認可された人のみがカテゴリー2までの行為を電動の整歯器具を用いて行うことができ、

そのためには一定以上の経験数や試験合格など、いくつかの要件を満たす必要があるそうです。

つまり養成所を出れば何でも自分ですることができる、というわけではないのです。

 

さて、このコースはBasicコースとAdvancedコースに分かれており、

それぞれのコースがさらに2つに分かれております。

ですので、Advancedコースに参加するためにはBasicコースを2度受講する必要があります。また、Basicコース受講者はHand floatのみを扱います。

 

私は今回、初参加だったため、Basic 1.0コースを受講しました。

スケジュールとしては、初日から3日目は座学、4日目は頭部の解剖見学、

5,6,7日目は実馬を用いた実習、8日目はカンファレンス参加、最終日は症例報告

といった予定でした。


こちらはコース初日に配られたものです。

座学用の授業プリント、ヘッドライト、保護メガネ、防塵マスクです。

保護メガネと防塵マスクですが、Power Toolを使って歯を削ると非常に細かい粉塵が生じ、これが健康に悪影響とのことで、近くで機械を用いる際には着用が義務付けられていました。

 

実習では、Basicコースの受講者も整歯を練習するのですが

獣医師が常におり、すべての馬は鎮静処置を受けます。

 

まずは馬の外貌をチェックし、筋肉の左右差や硬さ、膿瘍などが異変がないかを触診します。

次に、口腔内を詳細に調べ、あらゆる異常やどの歯が尖っているか等を記載していきます。

その後は作業に移りますが、ほとんどの作業はインストラクターが行うため

実際に削っていた時間は練習というには物足りないような印象を受けました。


 

こちらはインストラクターが鑢整(ろせい;歯を削って整えること)の最終チェックとして嚙み合わせをみているところです。

唇を横に開き、片方の手で切歯を動かしながら上下の臼歯がどのように咬合しているのかを確認しています。

何度もチェックし、必要なら再び削り、再度チェックしていました。

 

初めから最後まで全てを行うのに、1頭あたり30-40分ほどかかると思われます。

これが本当のプロの仕事なんだと関心するとともに、

私が普段仕事で行っている鑢整がいかに足りないかを思い知りました。


このコースを受講して得たことは、まず知識面に関してです。

歯の疾患はもちろん、頭部の解剖とその機能、歯の解剖も必須の知識だということ。

認可されたEDTの方の知識量は本当に驚くものがあります。

専門的な話になりますが、歯髄のナンバリングやInfundibular cariesのグレード分類など

EDTでさえ分かっているのですから、獣医師である私は当然覚えていないといけないことなんだと

自分の甘さを痛感し、学びの多い9日間となりました。

 

住友