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Retained deciduous incisors〜切歯の乳歯遺残

 秋から冬にかけては離乳後の繁殖牝馬の歯科治療を実施する機会が増えます。今回、5歳の繁殖牝馬においてRetained deciduous incisorsを見かけ治療しましたので報告いたします!この症状は、ミニチュアホース、乗馬や繁殖牝馬、現役の競走馬でも見られ、それほど珍しいものではないように思います(個人的には今年4例目)。

 

原因は、永久歯が発生学的に不適切な場所に生えることとされています。発症すると、疼痛が生じたり、噛み合わせが不正になることに関連する問題が生じます。治療は、乳歯を抜歯した後に、永久歯が動きやすいようにスペースを与えることになります。

 

手順は簡単です。鎮静下にて、神経ブロック麻酔は必要なく、局所浸潤麻酔で十分です。その後、エレベーターで歯肉から剥がすと簡単に抜歯できます。乳歯は写真のように短いことが多いからです。抜歯後、舌側に生えてしまった永久歯#303は時間をかけて本来の場所へ移動しますが (Abnormally positioned teeth 'want to go home')、このままだと隣の#302に引っかかって動けません。そこで、マイクロモーターを使って(人の歯医者で使うものの安いやつ;笑)、#303の正中側の出っ張りを削って家に帰れるよう手伝ってあげます。無事に戻れたらまた写真をアップしますね。

下の写真は別の馬で現役の競走馬ですが、切歯列の2/3において乳歯と永久歯が2列になって並んでいます。このようなケースでは、全ての乳歯を抜歯しても舌側にある全ての永久歯が適切な場所へ移動するとは限りません。その結果起こる咬合不正が、現状の二重切歯以上に問題となる可能性があるため、このようにそれほど大きな咬合不正がない多歯にわたる二重切歯はこのまま保存します。

参考図書

・Advances in Equine Dentistry (veterinary clinics of north america 2013)

・Equine Dentistry 2nd edition

・AAEP Proceedings 2019

・Principles of Equine Dentistry

・Manual of Equine Dentistry

 

投稿者:敷地光盛  写真:竹内詩織