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当歳馬の股関節脱臼

 今年生まれた250kgほどの当歳馬が、速歩の状態で母馬とゲートの支柱に挟まれて、右後肢を負重出来ないとのことで往診した。右後膝の内側と膁部に擦過傷があり、後膝が外転している。支柱に右後肢が衝突し、外転方向に大きな力が加わったようだ。

 

 膝蓋骨脱臼を疑い、後膝周辺のレントゲン検査をするも異常所見はない。鎮痛剤で様子を見ることとなり、徐々に跛行は良化していったが、骨盤もレントゲン検査をすることにした。現場でのDR、90kVでの撮影で寛骨臼から大腿骨頭が逸脱していることが認められ股関節脱臼を疑い、NOSAI診療センターへ搬入した。

 

     右後膝の外転       右飛端の挙上、内向            寛骨臼から逸脱した大腿骨頭(90kV)

 

 

 130kVの大型レントゲンで撮影するとはっきりと大腿骨頭が頭背側に逸脱しているのがわかった。右下の写真では、水色矢印が本来の股関節の位置。黄色矢印で示す右大腿骨頭が背側へ変位している。これらの写真では分かり辛いが大腿骨頭が骨折し、割れていることも判明した。全身麻酔下で4〜5人で整復を試みたところ、少し元の位置に近づいたが、関節がガチッとハマるまでは出来なかった。大腿骨頭骨折もあることから競走馬としては諦めた。

                      130kVで撮影したレントゲン像