EOTRHについて

EOTRH (Equine Odontoclastic Tooth Resorption and Hypercementosis) は、馬の切歯と犬歯において歯の吸収やセメント質肥大を起こす疾患で、馬では2004年に初めて報告された比較的新しい疾患です。3461頭を調べた調査ではその1.85%にEOTRHが認められ、発症馬の平均年齢は12.6歳、馬の種類、性別、年齢に優位差はありませんでしたが、15歳以上に多いという報告もあります。人、犬、猫などでも報告がありますが、明確な原因は未だ解明されていません。臨床症状は、流涎症、食欲不振、歯肉の発赤・腫脹・疼痛・排膿、頭振、沈鬱、ハミ鋭敏、頭部を触るのを嫌がるなどが挙げられます。下の写真では、歯肉のドーム状の腫脹、発赤、歯石、歯肉の後退が見られますね。この疾患は進行性で、重度になると激しい痛みを伴うことから、食欲不振、沈鬱となります。今回のポニーも抜歯直前は沈鬱で、横になっている時間が増えていました。


上述のように、馬の切歯及び犬歯に発症し(臼歯での報告も少数あり)、レントゲン所見では、歯の吸収像、セメント質肥大、歯周靭帯スペースの拡大もしくは消失が認められます(写真上)。明確な原因はわかっていませんが、歯周靭帯への機械的ストレス、削り過ぎ、歯周病による炎症、虚血性壊死、ホルモン異常、代謝異常、遺伝、栄養などが疑われています。治療法は現状では抜歯のみです。全身麻酔もしくは立位と神経ブロック+局所麻酔で患歯を抜歯します。術後は10−20日間の抗生剤、必要に応じて鎮痛消炎剤を投与します。ほとんどの馬は、抜歯することで痛みが取れ、翌日には草を食べることができます。また活発な生活を取り戻すことが出来、騎乗運動など術前の使用用途に復帰することが可能です。予後は比較的良好な疾患と言えます。今回もそうですが、歯を何本か残した場合は、進行性疾患であることから定期的なレントゲン検査が必要です。

参考文献①Advances in Equine Dentistry ②Equine joint and  regional anesthesia  ③AM Pearson 2013AAEP  ④O. Lorello 2016  ⑤R.C. Smedley 2015  ⑥S. Rehrl 2018